日々目まぐるしく進化する、自動車機器。運転席のダッシュボードに搭載されるディスプレイも例外ではありません。表示されるナビゲーションや車両情報は、今や運転に欠かせない存在ですが、近年、高級車を中心にディスプレイの大型化や湾曲化、そして狭額縁化(画面の枠を細くするデザイン)が加速しています。こうしたデザインの変化により、表面のカバーガラスと樹脂フレームを貼り合わせる接着工程に新たな課題が生まれました。
その解決に挑んでいるのが、接着剤・シーリング材事業を長年手掛けてきたサンスターです。この事業は現在、グループ売上高の約3割を占め、近年は車載ディスプレイなど電子機器向け製品の開発にも注力しています。現在の取組みについて、サンスター技研株式会社の西川さんに話を伺いました。
サンスター技研株式会社 ケミカル研究開発部の西川哲平さん
西川:
これまで車載ディスプレイの接着工程では、産業用両面テープを使用するのが一般的でした。しかし、ディスプレイの狭額縁化が進んだことで、従来の工法における課題が浮き彫りになりました。課題は大きく3つあります。まずは、ディスプレイの額縁に合わせてテープ中央をくり抜く必要があるため、廃棄ロスが発生すること。次に、貼り付けは手作業が前提となり、ロボットによる自動化が困難なこと。そして、接着幅が1〜2mmという極めて細い領域になると、均一な貼り付けが難しいことでした。
機能材料グループは、これまで使っていた両面テープという方法から、接着剤の使用を提案。この方法で課題は一挙に解決の方向に向かいます。接着剤は、両面テープのように中をくり抜く必要がなく、必要な箇所にだけ正確に塗布できるため、廃棄ロスの削減になります。また、ロボット(ディスペンサー)による自動塗布が可能になり、ディスプレイ1台あたり約5秒という高速・高精度な作業が実現、精度も高く1mm以下の極細幅にも対応できるようになりました。コスト面でも、両面テープ比で約1/10に。さらに、真夏の炎天下から真冬の極寒まで、広い温度域での冷熱衝撃性の条件をクリアし、車特有の過酷な温度環境にも対応できます。車載ディスプレイ向け接着剤を積極的に提案しはじめると、さっそく2020年には自動車部品メーカー様が「ペンギンセメント 2460」を採用してくださいました。
快進撃は続きます。お客様のさらなる要望にお応えした「ペンギンセメント2460」の進化版「ペンギンセメント2470」が誕生します。自社設計の特殊ポリマーの配合により、設備投資や消費電力を抑えながら樹脂フレームへの強力な接着性を実現。自動車業界ではカーボンニュートラル*社会の実現に向けた目標設定が各社で進んでおり、製造工程における廃棄物削減や省エネへの取組みは、今やビジネス上の優先課題です。「ペンギンセメント2470」は生産効率の向上と環境負荷の低減という2つの課題を同時に解決できる点が支持され、現在は自動車部品メーカーにとどまらず、国内外のさまざまな業界・用途への展開も期待されています。サステナブルな視点での今後の展望について、西川さんは続けます。
*CO₂などの温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする状態のこと。
西川:
接着剤をはじめとする化学材料は、その多くが石油由来の原料からつくられています。そのため、天然由来・バイオマス由来の原材料への見直しが、今後の重要な課題だと考えます。さらに、人が日常的に触れる空間で使用される製品では、健康への影響も考えなければなりません。体に負担をかける物質をなるべく排除し、使用する人の健康に配慮した素材選定をしていくことも、ものづくりに欠かせない視点だと思います。そして忘れてはならないのは、お客様にとっての「使いやすさ」です。工程がシンプルになれば、作業時間やエネルギーの削減にもつながりますので。
環境にやさしく、人にもやさしい材料であるために、サンスターが挑戦し、解決していくべき課題は、まだまだあります。