老化のサインとして注目される
“オーラルフレイル”
食事でよく食べこぼすようになった、固いものが噛めなくなり、むせることも増えた。
さらに滑舌も悪くなったようだ・・。ささいな口のトラブルですが、こうした状態が続くようであれば、それは歯や口の働きの軽微な衰え、つまり“オーラルフレイル”の可能性があります。
これらオーラルフレイルの症状は“老化のはじまりを示すサイン“として注目されるようになってきました。健康と要介護の間には、筋力や心身の活力が低下する“フレイル”と呼ばれる中間的な段階があるとされています。その手前にある前フレイル期にオーラルフレイルの症状は現れます。フレイルから続く要介護状態に陥ることなく、健やかで自立した暮らしを長く保つためには、この段階で早く気づき、予防や改善に努力することが重要であるということがわかってきました。
噛める歯を残す
歯を失う2大疾患は歯周病とむし歯です。歯を失わないために毎日の歯磨きと定期的な歯科検診が重要です。抜けてしまった箇所があれば義歯やインプラントにより、噛める状態にしておきましょう。
お口の機能を保つ
お口には大きく「話す」「食べる」の機能があります。食べるには、口を開けて噛みくだき、味わい、食べ物をまとめ、舌で送り込み、そして飲み込むといった一連の動きがあり、噛む力や飲み込む力、舌やだ液といった様々な機能が関わっています。
もっと「歯や口の働き」に注目しましょう!
歯や口にはそれぞれ本来持っている多くの「働き」がありますが、それは専門的には「口腔機能」(こうくうきのう)と呼ばれています。それは大きく分けると、「食べること」(噛む、すりつぶす、飲み込む、味わう)と、「話すこと」(発音、会話、歌う)ですが、「感情表現」(笑う、怒る)や「呼吸」なども含みます。オーラルフレイルはこのような口腔機能のささいな衰えから始まり、心身の機能低下(フレイル)にまでつながってしまうと考えられています。例えば、食べにくいものを避けて柔らかいものを好んで食べていると、噛むために必要な筋肉が衰えて咀嚼機能がさらに低下し、図のような悪循環に陥ります。
口腔機能が低下すると、
誤嚥ごえん性肺炎になるリスクが高まります。
口腔機能が低下すると、
誤嚥ごえん性肺炎になるリスクが
高まります。
誤嚥ごえん性肺炎になるリスクが高まります。
誤嚥ごえん性肺炎になるリスクが
高まります。
良く噛み、飲み込む機能が低下することで、誤嚥(ごえん)が起こります。歯周病や虫歯、口腔乾燥などにより、お口の中の環境が悪化すると、食べ物や唾液に含まれた細菌が、誤嚥により気管から肺に入り、肺炎を引き起こすことがあります。これが誤嚥性肺炎です。
食べるための機能が正常かどうかを調べる口の動き
食べるための機能が正常かどうかは、パ、タ、カの発声で簡単にチェックすることができます。
「パ」…食べ物を口からこぼさない唇の働き
「タ」…上あごにしっかりくっつく舌の働き(食べ物を押しつぶす・飲み込む)
「カ」…誤嚥せずに食べ物を食道へと送る筋肉の働きがあるかどうか
連続して5秒間に何回発声できるかを調べますが、
1秒間あたり6回(5秒間で30回)以上発声できれば健全です。
これらは「滑舌」が低下していないかを調べるのにも有効です。
要介護にならないために、すこやかな「口腔機能」を維持する!
口腔機能が衰えると、話すことが減るだけでなく、栄養状態の悪化で筋肉がやせ、体力が低下して外に出かけることも少なくなってしまいます。つまり歯や口の働きは、「社会とつながる」ための重要な役割を担っていることがわかります。
高齢者が「社会とのつながり」を失うと、まるでドミノ倒しのように心身の活力が弱まり、要介護になっていくことが明らかになってきました(大規模高齢者虚弱予防研究・柏スタディー2015)。こうした事実から、食卓を囲み食事すること、仕事でも趣味でもボランティアでも、楽しく会話したりからだを動かすこと、つまり「口腔機能」に関心を持って、「社会とのつながり」も維持すること、そうしたことが要介護になりにくい体となり、健康寿命を延ばす“コツ”と考えられるようになってきました。
長い人生をすこやかに生き抜くためには、“オーラルフレイル”への取り組みが必要です。