2024年1月から2月にかけて、東京都荒川区立の全小中学校34校の小学3年生・5年生、中学1年生を対象に、授業の1コマ(小学生は45分・中学生は50分)を使ってむし歯予防のための歯科保健指導が、また小学1年生には歯みがき指導が行われました。これは、東京都荒川区の委託事業として、荒川区歯科医師会、荒川区学校歯科医会、荒川区教育委員会とサンスター財団が協力して行っている、お口の健康習慣の授業。なんと、1967年から毎年実施してきたもので、今年で57年目になります。
この授業では、学校歯科医会・歯科医師会から派遣された歯科医師とサンスター財団の歯科衛生士が、年齢に応じたむし歯予防の指導を行います。歯と口の健康についての基本的な授業のほか、3年生ではお口の役割や歯みがきはいつ行うと良いかといったクイズを交えた講話、5年生ではむし歯のことだけでなく一歩進んで歯周病についても学びます。正しいハブラシの使い方はもちろん、デンタルフロスを使った歯間清掃具の必要性や使い方なども、顎模型を使いながらわかりやすく指導します。さらに、歯垢を赤く染めるカラーテスターで、正しく歯みがきができているか、みがき残しがないかをチェック。手鏡を覗き込んだり、友達同士で見せ合ったりして、赤い部分がほとんどなくなるまで真剣にみがく様子が印象的でした。最後に、希望者だけではありますが、授業の中でむし歯予防として歯の質を強くしてむし歯菌の働きを抑えるはたらきがあるフッ素洗口液を実際に試しながら、使用方法の指導を行って終了します。
長年の取り組みの間に新たな課題も出てきていますが、関係者で協働し、より良い指導になるよう改良を加えながら、今後もこの活動を継続していく予定です。
荒川区学校歯科医会 宮坂芳弘先生のコメント
荒川区では区立小学校中学校を対象とする「歯・口の健康づくり事業」を行ってきましたが、サンスターの歯科衛生士と毎年相談しながら指導法も進化させてきました。子どもの頃から適切な歯みがき指導を受け、家庭での習慣を身につけ、かかりつけ歯科医を作り定期的な歯科受診でお口の健康状態をチェックすることの大切さを、繰り返し伝えることが重要です。長年の取り組みで、口腔保健に対して非常に意識の高い児童・生徒(家庭)が増えているのは事実ですが、関心が低い層との格差が広がってきているようにも感じます。この地域に限らずそのような傾向はあるのですが、全体をどのように底上げをしていくかは課題のひとつです。新潟県でむし歯予防に有効と実証されたフッ化物洗口を、今後も広めていけたらと思います。
なお、サンスター財団は大阪と東京の2拠点に歯科衛生士が在籍し、幼稚園・保育園・小中学校・高校や企業など様々な対象者に合わせた歯科保健事業を行っています。大人向けでは、むし歯予防だけでなく、歯周病予防やオーラルフレイル(お口の虚弱化が老化を早めてしまう現象)予防などの内容も盛り込むなど、お口の健康から全身の健康を守る活動を行っています。
参考情報①:子どものむし歯は減少
文部科学省が発表した2022年度(令和4年度)に幼稚園児から高校生までを対象に行った学校保健統計調査の結果、むし歯がある人の割合が幼稚園24.9%、小学校37.0%、中学校28.2%、高校38.3%といずれも前年度より減少し、全学校種で計測開始から過去最低値となったことがわかりました。各年代でむし歯の割合が90%を超えていた1970年代から大きく改善しています。
参考情報②:大人のむし歯は依然として多い
厚生労働省の2022年度(令和4年度)歯科疾患実態調査によると、5歳から44歳にかけては年々むし歯の罹患率は減る傾向にあります。しかし、2022年の調査でも大人になるに従いむし歯の罹患者は増え、45~64歳では調査年にかかわらず、ほぼ100%に近いむし歯有病率が続いています。歯みがきや歯科受診の習慣づけは、大人にも必要と言えそうです。