HIV感染症(エイズ)の分野で先進的な研究を続けられている、イリノイ大学歯学部のジョエル・B・エプスタイン教授にうかがいました。
エイズと口腔ケア
エイズウイルス(HIV)は、体の免疫機能を低下させて様々な症状を引き起こす病気であり、「口腔と全身の健康」の関係を考える際のひとつの例となります。この分野で先進的な研究を続けられている、イリノイ大学歯学部のジョエル・B・エプスタイン教授にお話を伺いました。
ジョエル・B・エプスタイン教授/Dr. Joel B. Epstein
米国 イリノイ大学シカゴ校歯学部口腔内科・診断科学科長、教授
Professor & Head, Department of Oral Medicine and Diagnostic Sciences, College of Dentistry, University of Illinonis at Chicago
監修:前田 憲昭 先生
(厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業
「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究」(主任研究者 岡 慎一)
「歯科のHIV診療体制整備」分担研究者)
まず、HIV/エイズ(※1)と口腔ケアの関係についてお話いただけますか?
口腔内を観察すれば、その人の体に何が起こっているかを知ることができます。エイズに関連して言うと、まず、HIV(エイズウイルス)に感染した直後に、「急性期」といって身体全体の免疫力が落ちるため、口腔内に何らかの症状が現れます。つまり、HIV感染後、最初に症状が現れるのは口腔だということです。また、感染してから何年も経ち、際立った症状がなく、治療薬の効果を測る免疫促進細胞やヘルパー細胞、血中ウイルス量が安定していても、それぞれの機能が低下しているために、免疫システムの効率が低下している、という場合もあります。HIV陽性者の方が、こうした体内の微妙な変化に気づくきっかけになるのが、口腔内に起こるわずかな変化なんです。
免疫が低下していると、どんな口腔症状が現れるのですか?
HIV陽性者に特有の症状というものはないのですが、重度で、治癒しにくい傾向があります。具体的には、ハグキの変化、くちの乾き、粘膜が異常に白くなったり、赤くなったりすること、膿が出るような細菌感染を原因とする炎症や味覚の変化、飲食時の口の糜爛(ただれ)、歯みがき時の出血、歯の痛みやぐらつきが見られます。特にハグキの変化は、一般よりも急速で症状も際立っています。また、細菌感染症と腫瘍が同時に見られるなど、さまざまな症状が一度に出ることもあります。
歯科医は口腔内を観察することで、全身の疾患について予測できるということですね。
そうです。HIV/エイズの場合は、症状から診断する場合と、患者のこれまでの症状や年齢、リスク要因などから選択肢を絞っていく場合とがあります。重要なのは、まず患者を詳細に診察することです。リンパ節に関連する頭と首、ハグキ・歯・頬・舌を含めた口腔内粘膜を詳細に診察していきます。もし何らかの症状が見られた場合は、通常HIV陽性者に見られる症状ではないとしても更なる診断が必要になります。また、標準的な処置で治りにくい場合も、潜在的な影響要因としての全身の健康状態に目を転じる必要が出てきます。同時に、セックス・パートナーの数、薬物注射の経験、血液製剤の使用歴など、HIV感染のリスク要因を聞くこともあります。
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