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健康寿命延伸のキーワード、「フレイル」「オーラルフレイル」とは


東京大学 高齢社会総合研究機構 教授
飯島 勝矢先生

超高齢化社会を迎えた日本では、健康上の問題で制限されることなく日常生活を送ることのできる期間である「健康寿命」をいかに伸ばすかが課題となっています。課題解決の鍵として注目されているのが、加齢によって心身の活力が低下した状態を意味する「フレイル」という概念です。さらに最近では、口腔機能の軽微な衰えに着目した「オーラルフレイル」という新たな概念も構築されています。フレイル、オーラルフレイルの提唱者のお一人であり、研究や啓発活動を主導されている東京大学高齢社会総合研究機構 教授の飯島勝矢先生に、フレイル、オーラルフレイル予防の重要性について伺いました。


負の連鎖に警鐘を鳴らす「オーラルフレイル」への気づき

人間は誰でも加齢とともに心身の機能が低下し、健康で自立した生活が送れる状態から介護が必要な状態へと、「老いの坂道」をゆっくり下っていきます。この坂道の中間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル(frailty=虚弱)」と呼ばれる段階があり、要介護となる最たる要因となっています。しかし、適切な介入を継続すれば健康な状態に戻すこともできるため、早めに気づいて予防することが重要です(図1)。



フレイルは多面的な特徴を持ち、身体的な衰えのほか、心や社会性の衰えも含まれます(図2)。特に、身体的フレイルのひとつである筋肉の衰え(サルコペニア)は、フレイルを加速させる最大の要因と考えられています。例えばサルコペニアにより足の筋肉量が低下すると、歩行速度が落ちたり転倒しやすくなったりして外出を控えるようになり、外出頻度が減ると社会との接点が少なくなってうつや認知機能の低下につながるという負の連鎖が生まれます。

私は老年医学の専門家として、サルコペニアなど全身の筋肉の虚弱について研究してきましたが、ある調査結果をきっかけに口腔機能の衰えにも着目するようになりました。同一市内にある2つの地域で要介護認定率を比較したところ、高齢者数や高齢化率はほぼ同じであるにもかかわらず、約2.5倍の差があったのです。同一市内ですから生活環境は共通で、医療機関の数やアクセス条件も変わりません。一体、何がこの差をわけるのだろうか
──その原因をつきとめるべく地域在住高齢者コホート研究を行ったところ、口腔機能の低下がフレイルの進行に大きく影響していることが明らかになってきました。