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「がん治療を支える歯科の介入~食道がん手術の周術期における口腔ケアの重要性~」(2)

口腔ケアは術後肺炎の予防につながるのか?

周術期管理に口腔ケアを導入して本当に肺炎を予防できるのか――この問題を検証するため、当院では「胸部食道がん手術における術後肺炎の発生頻度に関する他施設共同後ろ向き観察研究」を行い、術後肺炎の頻度とリスク要因を検討しました 7)。過去の報告では肺炎の定義が一定しておらず、術後肺炎の発生頻度に隔たりがあったため、本研究では胸部X線検査で肺に影が確認できたことを必須条件に、①38℃以上の発熱 ②白血球数の異常(3,000/μL以下または10,000/μL以上) ③膿性痰のうち2つ以上を認めたものを肺炎と定義しました。その結果、対象615例のうち肺炎発症があったのは66例(10.7%)、さらに多変量解析によって術後気管内チューブ抜去遅延と5%以上の治療前体重減少が術後肺炎のリスク因子であることがわかりました。つまり術後肺炎予防には、治療前の栄養状態の管理と、術後早期の気管内チューブ抜去により口腔内細菌の肺への流入を防ぐことが推奨される、さらに付け加えるとそもそも口腔内細菌の数を減らしておくことが大切だという考察が可能になります。

ここで、口腔ケアを周術期管理に導入している当院の、2002~2008年までのデータを検証してみます。胸部食道がんで開胸開腹食道切除再建を施行した191例の、ほぼ100%が口腔ケアと呼吸器リハビリテーションを受けており、そのうち術後肺炎を発症したのは21例(11%)でした。過去の論文では肺炎合併率が約30%であったことから 8)、口腔ケアと呼吸器リハビリテーションという2つの支持療法には、一定の肺炎予防効果があったのではないかと考えます。

続いて、術前の口腔内衛生状態が口腔ケア介入によってどう変化したか、さらに衛生状態の変化と術後肺炎発症との関連を当院で調査した結果をご紹介します。この研究では術前に口腔ケア介入があり、初診時・術前ともに口腔内評価ができた患者62人について、口腔ケア介入前後の口腔内衛生状態を、良好、概良、やや不良、不良という4段階で評価しています。その結果、62人のうち初診時には30人だった良好群が術前には49人に増え、口腔ケアの介入で口腔内衛生状態が改善することが示唆されました。また、口腔衛生状態の改善群と非改善群で術後肺炎の発生頻度を比較したところ、改善群では53例中6例、非改善群では9例中5例と、改善群で有意に少ないという結果になり(p=0.0062)、術前の口腔内衛生状態の改善が、術後肺炎の予防に大きく寄与すると考えられました。