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「ここまで進んだ『がんの医科歯科連携』とこれからの課題」(3)

これからの課題

2014年12月末の時点で全国約12,000人の歯科医師が、がん診療医科歯科連携事業の講習会を受講し、連携登録医となっており、地域歯科医院との連携体制の全国均てん化が進んでいます。しかし歯科部門を有する病院は全病院の20%未満であり、残りの80%の病院ではがん患者には十分な歯科支持療法が行われていないのが実情であり、この状況をカバーするため医科歯科連携事業をスタートさせました。歯科側の受け入れ体制は徐々に整いつつあるものの、医科の先生方や患者認知度はまだまだ低く、連携が上手くいっている地域とそうでない地域の差が大きいように感じています。我々はまずはがん治療時の医科歯科連携体制が構築されていることを広めようと、2015年7月には日本臨床腫瘍学会で医科歯科連携のセッションを開催するなどの周知活動を行っています。

がん診療医科歯科連携を推奨する理由には、がん患者の高齢化という問題もあります。私が当院に着任した2006年頃は、80歳以上の患者に対して手術を行うことはほとんどありませんでした。しかし、現在では80歳以上はもちろん、90歳以上の超高齢者であっても手術を受ける患者が増えています。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、今後もがん治療を行う高齢患者数の増加が予想されています。高齢者のがん治療で問題となるのは、合併症発症リスクの増加です。高齢者は一見健康そうに見えても「フレイル(Frailty)」と呼ばれる状態にあり、さまざまな機能低下を生じています。これまで普通に生活していた方でも疾患による傷害や侵襲的な治療などの「きっかけ」により、一気に全身状態が悪くなったり、場合によっては要介護状態になってしまうことがあります(図4)。高齢者のがん治療では、このフレイルにともなう治療合併症の予防・軽減が重要であり、歯科支持療法は今まで以上に大きな役割を担うことになりうると考えています。

「がん治療に口腔ケアがなければ、治療の質が担保されない」。これは、がん治療時の口腔ケアの普及と医科歯科連携体制の構築に力を尽くされた、故・大田洋二郎先生の言葉です。この言葉通り、現在は口腔ケアなくして十分ながん治療は行えない時代になってきていると思います。今後も病院内・病院外の医科歯科連携体制を活用した歯科支持療法の普及に努め、がん患者のQOLとがん治療成績のさらなる向上に貢献していきたいと思います。

図4:医科歯科連携の課題

【文献】
1) Temel JS et al, N Engl J Med 2010; 363:733-742.