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vol.1 がん治療と口腔ケア

3.がん治療での歯科医師の役割とは?

私の場合、大学を出て、すぐがん治療を専門におこなう病院に勤務しました。最初は、口にできるがんの治療に興味がありました。ところが、10年ほど勤務すると、がん治療の中に口内炎や口の感染症など、さまざまな口のトラブルに悩む患者さんを診察する機会が非常に増えてきたのです。これは本当に予想外でした。

これまで日本では、がん治療中の口のトラブルに対処するのは、ほとんどが看護師さんでした。しかし私が、白血病やリンパ腫などの「血液のがん」を治療する病棟で、チームを組んで診療にあたっていたとき、抗がん剤治療を中断せざるをえないほど、ひどい口内炎をおこす患者さんを何度も診察するうちに、口の知識をしっかりもっている歯科医師が看護師さんと協力して、きちんと対応、ケアをするべきだと思うようになったのです。

10年以上前からそのような思いを持っていましたので、静岡県立静岡がんセンターに勤務してすぐに病院全体のスタッフに、口腔ケアをがん治療のなかに組み込んでもらうようにお願いしました。これは全国でも初めての試みだと思われます。

さらに、がん治療に広く精通した歯科医師を育てるための、レジデント制度という若い歯科医師を教育する3年間の教育システムを作りました。こちらの試みも全国で、この病院が初めてだと思います。

しかしながら、こうした試みも静岡県立静岡がんセンターのなかだけでは何の広がりも持ちません。「この病院で治療を受ける患者さんはいいね」という話で終わってしまいます。
これは、将来、是非やり遂げたいと思っていることですが、全国の多くの歯科医師が、がん患者さんの口腔のトラブルをサポートするネットワークを構築して、がん治療にともなう歯科的な問題についての知識を共有する。そして、がん治療に立ち向かう全国の患者さんの口腔ケアや歯科治療を安全に、安心しておこなうことができる環境をつくりたいのです。

この考えのモデルとなる取り組みを、平成18年より、静岡県立静岡がんセンターがある静岡県東部地区で始めました。この活動が軌道にのれば、将来的に、全国のがんの拠点病院と地域歯科医師会との連携で、がん患者さんの口腔の問題をサポートするシステムを作ることができると思うのです。

同時に、がん治療に専門的にたずさわる、がん治療をサポートする歯科医師、歯科衛生士への期待も高まっています。生きることの原点である口からがん治療をバックアップする。それがあたり前のことになる日が一日も早く来ることを願っています。