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製品開発ストーリー ハブラシの毛先

日々進化を続ける!「ハブラシの毛先」開発ストーリー

サンスターは1953年からハブラシの販売に取り組み、その後、1959年にハブラシの製造を開始。以来ハブラシを筆頭に、歯間清掃具、口腔清掃具をあわせ少なくとも600種類以上もの商品開発を行ってきた。特にハブラシは毛先のバリエーションが豊富であり、特殊な毛先が次々に生み出されている。その開発の最前線にいるのが、オーラルケア事業部オーラルメカニカルグループの研究員たちだ。その中の一人、鶴川は、Ora2ハブラシをはじめとするヒット商品の開発に数多くかかわり、入院患者向けの口腔清掃具の開発などにも携わっている。

オーラルケア事業部
オーラルメカニカルグループ研究員
鶴川 直希

話を始めた鶴川の前には、たくさんのハブラシが並ぶ。
自社の製品はもちろん、外国製のものも見られた。海外に出張する機会があれば、必ず新製品をチェックし、アメリカやヨーロッパにあるにあるグループの海外拠点から取り寄せることもあるという。製品の開発には、こうした情報収集がかかせない。収集した情報から、消費者はもちろん、歯科医師、学術文献など、幅広い角度からニーズを掘り起こし、どんな技術が使えるか、どんな形がいいか、どんな素材を使うか、アイデアを具体的なイメージに落とし込んでいくのだ。
そうして世の中に生み出された製品の数々を、今回は毛先の加工技術に焦点をあてながら紹介したい。

はじまりは毛先を丸く加工する技術から

初期のハブラシは牛の骨や竹でできたハンドルに、豚の毛や馬の毛を植えたものだった。
サンスターには1959年に始まった50年以上のハブラシ加工の歴史がある。

先丸加工

「サンスターでも1990年代くらいまでは一部豚の毛のハブラシをあつかっていました。1950年代に、ハンドルの部分に合成樹脂、毛の部分には合成繊維が使われるようになり、そこから本格的にハブラシの製造がはじまっていきます。しかし、当時のハブラシは単にハンドルに毛を植えただけのもの。毛先がそろっていないので、とにかくみがきにくいんです。そこで毛先を平に切りそろえるという技術が生まれるのですが、切りっぱなしだと毛先が角張った状態です。これでみがくと、チクチクしてハグキが痛いという声が。そこで生まれたのが、角張った毛先をグラインダー(やすり)で削って丸くする 「先丸加工」です。これがハブラシの毛先を加工する基本の技術となっていくわけです」。

歯周病対策から生まれたG・U・Mシリーズ

先丸加工が一般的に広まると、サンスターは一歩進んだ技術に着目する。

テーパード加工

「グループ会社であるアメリカのジョン・オー・バトラー社(現Sunstar Americas Inc.)が展開していた、毛先を細くする『テーパード加工』と呼ばれる技術がありました。これは、先ほどの先丸加工の進化形と考えてください。グラインダーを使って丸い毛先をさらに細く削っていくのです。この技術はG・U・Mというブランドを使って日本で展開することとなります。G・U・Mは、ご存じの通り日本初の歯周病予防のブランドです。歯周病は、歯とハグキの境目に歯周病菌がたまり、炎症を起こすもの。そこで、この境目の汚れを取るために、毛先を細くする技術が考え出されたというわけです」。この技術が、G・U・Mの先細毛シリーズに使われている。

「G・U・Mの超先細毛シリーズは、少しやわらかめの特殊なポリエステルの毛をヘッド部分に植えた後、物理的にグラインダーで削って、毛先だけをとがらせていきます。そのため、先は細くても根元はしっかりしているので、毛先が広がりにくく、力強く汚れをかき出すことができます。また、グラインダーで物理的に削るため、表面がデコボコしているので、汚れをかき出しやすいという利点もあります。歯周病を対策するという観点では、歯とハグキの隙間の汚れをしっかりかき出せるハブラシが有効という考えのもと、サンスターは現在でもグラインダーを採用しています」。

G・U・Mでは、さらに進化した2タイプのハブラシが開発されている。それが先端3本毛シリーズと無平線ハブラシだ。

「先端3本毛は、歯茎の状態が弱ってきた方のために開発を行いました。1本の毛の先端を3本の細い毛に特殊加工した毛先を採用しています。これは、PBTという素材で3本のナイロンの毛を包み、先端を化学処理するとPBTの部分が溶けて3本の細いナイロンの毛が突出してくるというものです。先端の細い毛先が歯や歯茎にやさしくあたり、根元の弾力で歯周病の原因となる汚れをしっかり除去する仕組みになっています」。

そして、G・U・Mシリーズの中でも少し変わった製品が無平線ハブラシである。

「ハブラシには、毛を植える際に金属の板(平線)で押さえて固定する平線タイプと、金属を使用しない無平線タイプの2種類があります。サンスターは日本で初めて無平線ハブラシを製品化しました。実は、これは、サンスターで4モデル目の無平線タイプのハブラシなのです。最初にハブラシの毛先の部分となる毛を束ねて毛の端っこを熱で溶かして固定、そこに樹脂を流し込んで固めています。特徴は、ヘッド部分の薄さです。金属の板を使用しない分、薄くすることができ、口の中で操作性がよくなるのです。また、毛の穴をハグキに沿うように三角の形にしているのですが、このように毛の束を3次元の形状にすることができ、毛の束ごとのバリエーションを出すことができることもポイントです。
日本で初めての無平線ハブラシを製品化するまでの道のりは長いものでした。イメージを固めて試作品を作っていくのですが、製造設備が複雑なため、機械で試作品を作ることできなかったのです。ですから、試作品はほとんど手作業で作っていました。毛の束をつめて並べて溶かして固定、金型の中に入れて樹脂を流して固めます。手作業で何百本という試作品を作りましたね。グループのメンバー総出で試作をしていた時期もあるほどです。そうした苦労のかいもあって、国内で初めて無平線のハブラシを発売することができ、今にいたっています」。