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第64回日書展受賞者 齊田香住先生 インタビュー

第64回日書展 サンスター国際賞を授与

サンスターは、日本の書道界で最も権威のある日本書道美術院が主催する「日書展(にっしょてん)」へ「サンスター国際賞」を授与しており、本年の受賞作品が発表されました。

1月4日(月)に東京都美術館で第64回日書展の選考会が行われ、第2回となる「サンスター国際賞」が選考され、新書芸部の齊田香住(さいだかすみ)さんが受賞されました。作品は佐佐木信綱が出雲の宍道湖を訪れた際に詠んだ和歌「國つ御神寄り来し國を引き来縫はし宴せりけむ月夜の湖か」です。出雲市在住の齊田先生がこの和歌に感銘を受け、今回の題材として書かれたそうです。

1月5日(火)には、ホテルオークラで受賞者の祝賀会が開催されました。日本書道美術院は、昭和20年12月、日本の再建とともに発足した書道の総合団体で全国に数十万人の会員を有しており、毎年1回新春のこの時期に東京都美術館で一大書道展「日書展」を開催しています。

サンスター国際賞受賞 齊田香住先生 インタビュー

初めに齊田先生が受賞された作品の分野である「新書芸」とは、どのような「書」なのでしょうか?

書は、漢字・仮名を中心とした作品を主として発展してきました。その歴史の中で、日本書道美術院の創設者である飯島春敬先生が、現代の詩や文章も書の素材にすることを提唱し、今では多くの書家が取り組んでいる分野です。漢字、仮名まじりをはじめ、カタカナやアルファベットも作品の中に取り入れることがあります。

齊田先生は、新書芸を主に書かれているのですか?

出展作品は、すべて新書芸です。もちろん教室では、漢字や仮名も教えていますが、新書芸との出会いが、私の書への取り組み方を大きく変えたことになります。

そのきっかけとは?

書が身近にある家に生まれ、書に触れるのは当たり前という環境で育ちながら、幼い頃は、じっとして書くことが苦手で、あまり優秀な生徒ではありませんでした。それでも書とは離れずに大学でも勉強しましたが、なかなか熱心な生徒にはなれないままでした。
その後、結婚・出産を経て、もう一度、自分を表現できるものに取り組みたい、と思った時に新書芸に出会いました。幼少時代に窮屈だったお稽古とは違って、自分の好きな詩や文章を作品として表現できることに没頭していきました。

今回の作品に佐佐木信綱の和歌を選ばれた理由は?

これは、信綱の「宍道湖舟中月下賦」の一首で、宍道湖のお膝元で生まれ育ち、朝夕、宍道湖を眺めて生活する私にとっては、特別な意味を持つ作品で、ぜひ書きたいと思っていま した。
この歌には、出雲風土記に伝わる「国引き神話」の逸話が盛り込まれています。「国引き神話」は、出雲が未完の国であったとき、他の国の土地を引っ張ってきて国を作ったという神話です。土地と時間のとらえ方が雄大で、とても魅力を感じました。心を動かされた素材でないと書けないものです。

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苦心された点は?

技術的には、この文字数をどう収めるのか、また、この歌のロマンが消えないように強さとロマンを合体させて書くことに苦心しました。初めは、紙を縦に使っていたのですが、なかなか納得できずに、どうしたものかと悩みました。
そこで、思い切って紙を横に使ってみました。それによって、「国引き」のパワーとスケールの大きさが表現できたのはないかと思っています。

表現の部分でのポイントは?

最後に「宍道湖舟中月下賦」をどうしても書きたかったのです。「月夜の湖」は、ただの湖ではなく、宍道湖であることを伝えたかったので、「月夜の湖か」をいかに響かせるかに苦労しました。
ただ、あまり思い入れが激しすぎると、ひとりよがりな作品になり、見た方が一歩ひいてしまうことがあります。神の国を象徴する宍道湖に祈りを込めて謙虚な気持ちで書きました。

書の楽しさ、魅力はどんなところですか?

書く人それぞれ、その人でなくては表現できないものが現れることです。新書芸の良さは、誰でも書きたいものを素材にすることができること。そうすると、書いた人の意外な一面が書に見えたりします。
歌ったり、踊ったりする時、人によって、リズムのとらえ方や歌い上げ方が違うように書にもその人ならではの魅力が現れます。

最後に今後の抱負をお聞かせください。

もっともっと心に響く書を書きたいと思っています。そのためには、嗅覚、視覚、触覚、聴覚、味覚という五感を磨きたいと思っています。
書は、日本庭園にも例えられます。メインに据えるものがあって、影、日向を作っていく。書も強弱、潤滑、遠近を複合的にからませて作品を作ります。そんな作品を書くには、五感を研ぎ澄ましていくことが重要だと思っています。
そして、そんな書が書ける書家を一人でも多く育てられたらとても幸せです。そのために、私自身もまだまだ精進します。

齊田先生ありがとうございました。