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第63回日書展受賞者 本橋郁子先生 インタビュー

第63回日書展 サンスター国際賞を授与

本年より、日本の書道界で最も権威のある日本書道美術院が主催する「日書展(にっしょてん)」へ「サンスター国際賞」を授与することになりました。
日本書道美術院は、昭和20年12月、日本の再建とともに発足した書道の総合団体で全国に数十万人の会員を有しており、毎年1回新春のこの時期に東京都美術館で一大書道展「日書展」を開催しています。
サンスターグループは、日本の書道界において唯一の国際賞である「サンスター国際賞」を設立することによって、書道の国際的発展に寄与しながら、同時に、世界のステークホルダーのご要望に、ビジネスと文化の両面において、これまで以上にお応えしてまいります。

1月4日(日)に東京都美術館で第63回日書展の選考会が行われ、記念すべき、最初の「サンスター国際賞」が選考され、かな部の本橋郁子氏が受賞されました。作品は万葉集より「夕さらば潮満ち来なむ住の江の浅香の浦に玉藻刈りてな~」です。

1月5日(月)には、授賞式が行われ、本橋氏にサンスター国際賞が授与され、本橋氏から、金田グループ会長に謝辞が読まれました。その後、ホテルオークラで受賞者の祝賀会が開催され、SSAの牧山副社長が主賓として列席し、700名の出席者の方々へ祝辞を述べました。

サンスター国際賞受賞 本橋郁子先生 インタビュー

万葉集を今回の作品の題材にした理由は?

日本最古の歌集といわれる万葉集には、他の歌集にはないこの時代を生きたさまざまな身分の人々の素朴であることの強さ、生命力を感じます。万葉集は、好きな作品が多く、題材としてよく選んでいます。

その中でも今回の受賞作は海の歌6首を題材にされていますね

幼い頃をすごした故郷を感じる海を2008年のテーマにして作品を書いてきました。季節毎に移ろう海の表情を書いた一年でした。特に、今回の作品では、春ののどかな海を表したいと思いました。船が漕ぎ出していく旋律やリズムにのって進む船を表現するために、どのように文字を散らすのか、どのように余白を活用すればよいか、何度も考え何枚も書いて、作品を仕上げました。

細字の作品を出展されることが、多いのでしょうか?

実は、細字の作品の出展はこれまでありませんでした。思いきって今回出したのですが、日本書道美術院理事長の飯島春美先生に「今回の作品は、従来の作品とは違う、新たな本橋さんの一面が見えてとても良い」と言われたことが、たいへんうれしく、また、自信になりました。私の師匠である故高木東扇先生も細字の作品で18年前に国際賞を受賞されており、同じ賞を受賞できた今回の思いはひとしおです。今後進む道への一つの標になったと思います。

作品を書いていて苦心された点は?

いつの作品も同じなのですが、よい作品に仕上がった時は、「気持ちが紙におりていく」という瞬間を感じることができます。そういった心境で常に書ければよいのですが、なかなかその境地に達することができずに、何十枚も書いては、つやがない、調べが聞こえない、表現しきれていないと、納得できない点がいつまでもあって、ジレンマを感じています。
今回の作品は、賞を取ろうと思って書いたわけではありませんので、無心に書けたのが良かったのかもしれません。ただ前半は、行間に不満が残りました。

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本橋先生が書道を始められたきっかけは?

書を始めたのは、子どもの頃、近所に絵、書、音楽などを教えている先生がいらっしゃって、その先生に絵を習っていました。戦後の貧しい時代ではありますが、絵が大好きでのびのび描いていた当時を思い起こします。
その後、東京に引っ越してから書道を習い始め、後年、高木東扇先生の門をたたきました。高木先生のお手本をいただいて、あまりの美しさに心がふるえました。

書の面白さ、魅力はどんなところですか?

書の面白さは、白黒で決める潔さにあります。紙の違いで墨色が変わることもあり、黒の強さだけでなく、墨だまりや墨の色で表現できるさまざま色合いをだすことにこだわっています。他の色を邪魔せずにどんな色にも寄り添っていける白黒の魅力に引きつけられ、一日中書き続ける日もあります。古筆を見たり、師匠の作品を見て学んでいますが、不器用なので、何枚も何枚も書く毎日です。

今後の抱負をお聞かせください

自宅でお弟子さんたちに教えていますが、これからも人との出会いを大切にしていきたいと思っています。高木先生との出会い、お弟子さん達との出会い、日本書道美術院との出会い、春敬コレクションの古筆とのとの出会い、すべてが私の財産です。感謝の気持ちを持って、みなさんに恩返しをしていきたいと考えています。
書は、達者に文字を書くだけでは表現できないものです。師匠は「『どう』書いてもいいけれども、『どうでもよく』ではいけない。書には作者の格が現れる」と常々おっしゃっていました。これからは「華やかな中にも憂いのある人の心の陰影が表れる」書を目ざしたいと思います。
恩師、高木東扇先生が亡くなられて10年になりますので、自分自身の思いをもっと作品に出していってもいいのかな、と思っています。
何を人々に伝えたいのか、どんな景色を作品で書きたいのか、一筆、一線を大切に、この賞の重みを、そして、喜びを心に刻みながら、精進してまいりたいと思います。ありがとうございました。