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| そんな小松さんを最近感動させたものがあれば教えてください。 |
| この前ベルリンで行ったペルガモン・ミュージアムですね。西アジアの遺跡やギリシャの神殿などにこめられた、人間の執念とか執着心に触れると、そこに人がいて、その人にドラマがあって、その人たちがどう生きてどんな歴史を築いたのか、と考えました。そうしたら身体が震えてきたんですよ。人間って時には愚かな行為に突き進みます。けれど、こんなに愛すべき美しい生き物もいない。人間を思うと、それだけでちょっと何かじっとしていられなくなっちゃう。やっぱり、大事なのは他者をイマジネーションすることだと思います。 |
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| 人間について考えることが、一番心をゆすぶられることなんですね。逆に落ち込んだとき、苦しいときはどんな風に乗り越えますか? |
| 私の机にはアンモナイトの化石があるんですよ。いろんなことで落ち込んだり、人間関係でなかなか大変だったり、原稿が書けなかったりしたときに、そのアンモナイトを手に取って10分ぐらい見ていると元気になるんですよ。アンモナイトが化石となった時間を考えると、私の人生なんて流れ星ほどでもないわけですよ。一瞬の人生に一瞬の悩みがあるのは確かですが、アンモナイトの化石が「時間がもったいない」って教えてくれる。ネガティブなことに思考を向けるより、楽しいことに、もしくは自分のやりたいことに向けよう、と。そう考えて、にこにこしてアンモナイトを机に置きます(笑)。だから、今、本当に毎日が楽しいですね。 |
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| 最近は、新しいテーマにも取り組んでいらっしゃるとか。 |
| 私は昭和30年代に生まれて、まさに昭和と平成をちょうど半分ずつぐらい生きているんですね。もちろん時代はどんどん過ぎていくものだし、新しいものが世の中に台頭して当たり前なんですけど、自分のルーツの時代はやっぱり昭和なんです。とはいえ、自分が知っている昭和なんて限られていて、第二次世界大戦のような負の遺産も有しているわけで、それに何か触れられないかなと思うようになりました。一つは「三船敏郎」というテーマに出会ったんです。今、息子さんや親族、関係者にインタビューをして、彼の人生、黒澤映画でのことなど、調査して書くということに着手しているんですね。もう一つは、日本最初のファッションモデルの女性たちの物語です。日本でファッションモデルという職業に就いた女性は、今は80代、70代後半になっているんですが、彼女たちの話を聞くと日本の女性たちのファッションの系譜がすべて判りますよ。 |
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| その当時の日本の女性としては珍しい職業ですよね。 |
| 昭和26年に英字毎日新聞が募集して、初めて誕生したんです。やっと戦争が終わって、食べる物も十分ではない時代ですよ。女の人がまだみんなもんぺを履いていて、着る物なんてまだまだっていう時代ですから。そもそも女性が自立をして職業を持つなんて、認められていなかった。その上、モデルって裸になって体を売るんだろうとかいうバッシングにも耐えなくちゃいけなかった。そんな中、ファッションを表現し、ファッションモデルという仕事を立ち上げていくまでの物語を書いているんです。その人たちが、女性が装うってこんなに素晴らしいことで、楽しいことなのだと、教えてくれた。彼女たちがいたから、今の私たちの自由なファッションがあるんですよね。 |
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| 昭和を追いかけようと思った、そのきっかけは何だったんですか。 |
| 今の時代ってものすごくスピードが速くなっていて、例えば3年前のことでもすぐ忘れちゃうじゃないですか。その半面、例えば昭和の時代のことを調べようと思っても何も残ってないんですよ。そのことに愕然としたんです。例えば、三船さんや黒澤監督が映画を撮っていた時代のことを調べようと思ってもほとんど資料がない。じゃあどうすればいいんですか?って言ったら、「生きている人に聞くしかない」って言うんですね。それを資料にして、ささやかでも活字にして書き残すことができれば、と思っています。 |
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| まだまだたくさんテーマがありますね。 |
| この仕事の面白さは年齢を得れば得るほど出会いがあるということです。作家って40代なんて駈け出しなんです。ノンフィクションの大家って皆さん70代、80代ですから。私なんかパーティーに行くと、「まあー若い、これからが長いのよ」とかって言われちゃう(笑)。だけど逆に言えば、一人前になるまでの修業時代が長いということでもあって、そういうゆっくりとした時間の流れも実はすごく自分には合っているんです。 |
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| じゃ、間違いなく生涯現役ですね。 |
| わからないけど、もし健康であれば、ずっと生涯現役で、ある日、眠るように死を迎えるのがいいですね。最後の日までどんどん取材して、原稿を書いて、次の日の朝、冷たくなっていたみたいな(笑)。ある意味テーマを選ぶということに関しては無限大ですから、本当にわくわくするし、逆にこの人生で、そうやってわくわくするものをいくつ作品にできるのかと思うと、あまりに思いが膨らんで、またちょっと気を失いそうになりますよ(笑)。 |
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| そんな小松さんの考える、「美しさ」を最後に教えてください。 |
| 想いを抱ける人だと思います。この間は、加賀まりこさんを取材させていただいたんですが、一流の人って自分を大きく見せたり声高になることもない。自分の人生に自信があるから、普通でいいんですよね。加賀さんは、私のように60代になった女には本当に役がないのよ、っておっしゃるんです。「『東京タワー』っていうお芝居でおかんの役が来たときは、ものすごく若い演出家の作品で、ものすごく怖かった。でも、自分がこの場所で生きていきたいから、ビリビリもっとしびれるような感覚を味わいたいから、飛び込んだのよ」って。その想いには震えました。もちろんすごくきれいな洋服を着たり、ものすごく素敵な宝石をつけたりもしているけど、それを聞くと、そんな物より、その魂のきらめきこそが人を魅了するんだなと思います。私も、弾むような魂を持ち続けていたいと思っています。 |
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| 今日は小松さんを通じて、元気や勇気、感動を分けていただきました。本当にありがとうございました。 |
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| 小松さんを通じて、多くの方々のエピソードに込められた勇気や感動に触れて、元気をいただいた気がします。そして小松さんの真摯な取材姿勢にも触れて、私も背筋がシャンと伸びました。これからの益々のご活躍をお祈りしています! |
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