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様々な分野で生き生きと活躍されている女性たち。各分野のプロである彼女たちの目から見た、健康、ライフスタイル、キャリアについて、広報の女性スタッフがお話を伺うインタビューシリーズです。 >> インタビュー一覧
CONTENTS INDEX
Interview vol.9 ノンフィクションライター 小松 成美さん (前編)
ジョン・レノンに救われた処女作
名作と名高い最初の本 ( ※ 『 ビートルズが愛した女−アスリット・Kの存在 』 幻冬舎文庫 ) のことをお話いただけますか?すごいエピソードがあると伺ったんです。
この本は若きビートルズのメンバーと親友になり、彼らを初めて撮影した若いドイツ人の女流写真家の心の交流を描いた作品です。アストリットが撮ったデビューする前のビートルズの写真ですが、メンバーは革ジャンを着て、ものすごいリーゼントヘアー。そして、みんな野生動物みたいな目をしているんですよね。明日も知れないけど、すごく野心がある鋭い目。その写真を一目見た私は、「撮ったのは誰なんだろう?」と気になって仕方がなかった。調べてみたら、それがアスリット・キルヘヒアというドイツ人女性だったんです。彼女の20代前半のセルフポートレートがものすごく美しいんですよ。それで、どうしても彼女に会いたくなっちゃって手紙を書いたんです。もちろんすぐに、「私はその時代のことは誰にも話すつもりがないのでごめんなさい」という返事が来たんですね。でも、どうしてもあきらめ切れなくて、毎週同じ構文でファックスしたんですよ(笑)。あまりにしつこいのでアストリットからは「クレイジー!」と言われ、マネージャーを介して、「もうお願いだから手紙をよこさないで」と、連絡が来た。それでも手紙を書き続けるんですけどね。
とにかく食い下がったんですね。
そしたら私が最初に手紙を出してから1年半ぐらい過ぎたある日、「もう嫌だ、1回会えば気が済むんなら、ハンブルグに来れば会ってあげるわよ」って連絡が来たんですよ。これで、このチャンスを逃したらもう二度と会ってもらえないと思って、とにかくありったけのお金を持ってオープンチケットを買ってハンブルグへ行ったんです。
どうなるかもわからなかったんですよね?
そう。会ってみるとアストリットは「もう気が済んだかしら」という態度で、ものすごく怖かったんですね(笑)。北ドイツの裕福な家庭に生まれながら人生に翻弄され、今は質素な暮しを送る彼女からすれば、私など真っ赤な他人でしかない。文化も違うし、親子ほど年が違うし、日本語なんて一言もわからないし、「わかり合うことなんか何一つない」と言う気持ちだったと思うんです。でも、私は「わかり合えないのなら、なぜあなたの写真が私を、こんなに虜にするんですか?」って言ったんですよ。
わかり合えるはずだ、と伝えようとされたんですね。
ええ。そうしたら、「うーん、それもそうね」「じゃあこの2週間なら暇だからいいわよ」と言って、毎日ホテルに来てくれるようになったんですよ。ただ、彼女は絶対に自分の人生を曲げて書かれたくないというのがあるから、すごく頑なだった。予定調和に感動物語にもされたくないという態度でした。ある日、取材の終盤だったんですけど、北ドイツ独特の良家のお嬢さんがたどるべき運命にどう彼女が抗ったのか、と私が聞くと、彼女は突然顔色を変えて「やっぱり無理よ、あなたにはわからないわ。もうこれはなかったことにしてちょうだい」って立ち上がたんですよ。私は、文字通り足にすがりついて、「このままインタビューを続けさせて欲しい。お願いします」と言ったんですけど、もうそれも振り払って。「別にあなたは悪くない。私たちは違う民族で、違う種類の人間だっていうことがわかったんだから、この2週間は無駄じゃなかった。じゃあ元気でね、もう会うこともないけど」と帰っちゃったんですよ。私も呆然としてしまって、どうしようと考えながら、一睡もしないで朝を迎えました。
また連絡があったんですか?
そうなんです。翌日に彼女が電話をかけてきて、「取材を再開する」というんです。彼女の話はこうでした。「ジョン・レノンが夢に出てきたの。ジョンが、酔っ払いを相手にライブをしていた時代、ロックンローラーなんて不良だと、普通のドイツ人は誰も自分たちを理解してくれなかった。でも君は僕たちを普通の若者として扱ってくれたし、あなたの家族だけは家に入れてご飯をごちそうしてくれたね。若い僕らをあんなにも理解してくれた君が、なぜあの日本から来た若い作家を受け入れないの?」と。すごいでしょう(笑)。「私、やっぱりあなたのインタビュー、最後まで受けるわ」って言ってくれたんですよ。
ジョン・レノンに救われた!
そう(笑)。もちろんきっとそれは彼女の潜在意識が、私を足げにして帰ったことに対して働きかけてくれたことだったんでしょうけど。その後、ようやく完成した本が出て彼女に届けてお礼を言ったとき、どうしても本を書くことを生涯の仕事にしたいと思ったんですね。その初めて本を書いているときは、生涯で1冊この本さえ出せれば死んでもいいと思っていたから、OL時代に貯めた500万円も全部使っちゃった(笑)。でも、本を書くことは、困難ではあるけれど、いろんな出会いを与えてくれるし、取材をすればその人の人生に関わった人物とか場所とかその時代とか家族とか、そのすべてにまた私に関わって影響を受けるわけですよね。そうした感激は、ほかのものに代えられなかったんです。
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