 |
| 診療だけでなく、執筆活動もされている本田先生ですが、その原動力は何ですか? |
| 原点となった、ある患者さんの話があるんです。亀田病院に勤めていたころのことなんですが、ぜんそくをお持ちの患者さんが、発作がひどくなったときに、ひとりで車で病院にお出かけになって、病院の駐車場まではいらしたんだけど、そのまま亡くなられたということがあったんです。そのことが、すごくショックだったんです。私たち医療関係者にとっては、重症のぜんそくは、救急車を絶対に迷わず呼んでいい状況なのに、この方はそうなさらなかった。そのときに、医者にとって当たり前だと思っていることを、もっと一般の方に知っていただきたいと思いました。 |
 |
| その想いが「ほぼ日刊イトイ新聞」の“ぜんそくシリーズ”になったんですね。 |
| 実はうれしい話があるんです。連載を始めて3〜4ヶ月経った時に、糸井さんから「退院してきたら絶対にまずこの御礼を書きたいと思っていたんです」と始まるメールが転送されてきました。差出人の方は、ある日、ぜんそくの発作がひどくなってきたので病院に行こうと思ったのだそうです。最初はタクシーで行こうと思って、お財布を持って玄関まで来たんだけれど、「そういえば、『ほぼ日』にぜんそくの発作は救急車を呼んでいい、って書いてあったから呼んじゃえ」と思って、救急車を呼んだんだそうです。そうしたら、すぐにICUに入り人工呼吸器につながれて、2週間の入院生活を送ったのだそうです。「本田さんの連載を読んでいなかったら、あのときにタクシーを止めようと思って、道で倒れていたかもしれない」と書いてくださって、実際にお役に立つことができたことが、しみじみうれしかったです。私が直接お目にかかってお伝えできる人というのは限られていますが、「ほぼ日」なら多くの人の目に触れる機会をもつことができます。読んだときには役に立たなくても、しばらく経った後で役に立ててもらえたらいい。そういう意味で、「ほぼ日」は私にとって宝なんです。 |
 |
|
| 『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』の出版も、「ほぼ日」での連載がきっかけだったんですよね。 |
| そうですね。HIVに感染するリスクは、どなたにもありうるのですが、それをご存じない方が日本にはたくさんいらっしゃいます。インターネットではないメディアでもお伝えできればいいなと思っていたところに出版のお話をいただいたので、本の形でHIVのことをお伝えしてみることにしました。 |
|
 |
| できることなら予防してほしい、という想いですよね。 |
| HIVに感染してしまった人を診療室で待っているだけでは絶対に間に合わない、というのが日本に戻ってからの5年間に私が学んだことなんです。HIV感染症は一度感染してしまったら、残念ながら現時点では絶対に治らない病気です。強力な抗HIV療法が始まって、寿命は飛躍的に伸びていますけど、まだまだ問題は山積みですね。その一方で、治らないけれど確実に防ぐことはできますから、まずこの病気のことを多くの方に知っていただきたいと思っています。野原に立って叫ぶ、みたいな感じもあるんですけれど、でもそれもすごく大事だと思うんです。 |
 |
| どうしても自分は関係ない、と思いがちですよね。 |
| 実は私の病院で取った患者さんのアンケートで、「HIVに感染してから性的行動は変わりましたか?」という質問をすると、7割〜8割の方が「安全な性的接触を心がけるようになった」とおっしゃるんですね。でも、質問を変えて「あなたは自分がHIVに感染していらっしゃることを、性的接触のあるパートナーにお伝えになりますか?」と質問すると、3割が「必ず伝える」。3割が「人によっては伝えることもある」。残りの3〜4割が「伝えない」とお答えになるんです。これはものすごく大事なデータだと思います。感染していらっしゃる方がパートナーに伝えないのはけしからん、ということでは絶対にありません。だって、誰にとっても難しいことは容易に想像できるし、大事だからこそ、失いたくないからこそ言えない、という人もいると思うんです。そうではなくて、HIVと無縁だと思っていらっしゃる方々に、実は感染していらっしゃる方は、自分が感染していることを知らないかもしれないし、知っていても実際にあなたにそれをお伝えすることができない可能性があるので、そうするとご自分で守るしかないですよ、と言いたいんです。ご自分を守る確実な方法は粘膜と粘膜との濃厚な接触に関して、バリアを使うということです。具体的には、性的接触の際には必ずコンドームを使っていただければ、と思います。 |
|