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Interview vol.6 ノンフィクション作家 島村 菜津さん (後編)
 
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イタリアのアートとスローフード 〜共通点は“美の飽くなき追求”〜
島村さんの何がスローフードに反応させたんでしょうか?
私、大学のときにかなりファストフードを食べていて、体を壊したんだよね。でも当時は原因がわからなかった。ポリープができたりして、ものすごく顔色悪いってみんなに言われて。病院は何軒か行って、色々な長たらしい病名はつくし、薬はバンバンくれるんだけど、なんだか判然としなかったの。最後は漢方薬に行き着くんだけど、値段が高くて、学生にはちょっと続かなかった。そういうころに、ちょうど卒論の準備でイタリアに行ったんだけど、気がついたら体調がすごく良くなってた。何が違うのかなあと思っていたら、イタリアにはまだ素朴な流通がだいぶ残っているし、個人店とかも元気なんだよね。市場に行ったら野菜や果物がビニールに入れずに平積みにしてあって、見ていてもきれい。だから楽しかったし、元気も出たんだなと思ったんだ。
身近な食材が元気をくれたっていうことですね。
取材しているときにはポーズを取る弁護士とか検事でも、夕食に招かれたり、こっちが「今日は日本料理作ります」って招待すると、ちゃんと夫婦で来てくれるわけ。そうするとすごく打ち解けて、取材ももっと深くできたの。それが平日でもオーケーだったから、食べる時間を確保するということにかけては、すごく大事にしている国だなと思った。それを書きたいなあと思っていたときに「スローフード」という言葉に出会ったの。だから、この国が大事にしているものを表現するいい言葉に出会ったっていう感じだったのね。
島村さんご自身が、体のことを考えた時に探していたものと合っていたんですね。
やっぱりおいしいものを食べる時間っていうのが、自分の生活で何を一番大切にしたいかっていうところの、わりと真ん中にある気がしたの。逆に言うとその部分だけは譲らなければ、生活の場所が変わったり、仕事の人間関係が変わっても、大丈夫だな、豊かだなって思ったの。
毎日の食事を大事にするというのは、想像しても楽しそうですよね。
その根っこは結局、その人が楽しいかっていうことなんですよね。ミラノはブランドが増えてお昼も店を開けるようになったけど、シチリアとか島に行くと、いまだに自分がお昼を食べる時間を絶対死守しているわけ。そういうしぶとさというのはあるね。自分が住みやすいのか、本当に楽しいのか、っていうところが基準なのよ。たぶん環境問題が今後もっともっとクローズアップされてきたら、ここに新しいビジネスの可能性もあると思う。
もともと美術を勉強されていたんですよね。なぜ別の世界に入ろうと思ったんですか?
イタリアに住んでいると、自分の普段の生活の中で美しいものを大切にしてるわけ。自分の生活のどこが一番大切で、どういう暮らしが美しいかということにすごく執着する。だからちょっとしんどくても、靴の美しさにこだわって、スニーカーよりもヒールとなる。町の景観もそう。市場でいちいちビニールに入れないのは、全部テカテカ並んで美しくないから。そういう発想で行くと、どこの駅前にもサラ金とパチンコ屋と食のチェーン店ができて、隣の駅と同じになっていくというのは、ちょっといたたまれないんだよね。美しくないじゃない。つまり、食べ方と町の眺めがつながっているわけだから、子供の美意識を育てるような国にするためにも、少なくとも今の時点で残っているうっとりするような眺めは死守したい。
イタリアのアートの世界とスローフードの世界は、美しさがつながってるんですね。
そう、まっすぐつながっている。逆に、イタリアはあれだけコーヒーの国なのに、缶コーヒーを作らなかったのは、やっぱり缶コーヒーを飲んでるおじさんは美しくないと思ったんだよね。飲むほうも、絶対に「メタルな味がする」って言うだろうし(笑)。だって以前、イタリアであるおじさんにチューブのわさびを持っていったら、「プラスチックの臭いがする」って言われたんだよ(笑)。失礼をばいたしました、発想が至りませんでした、みたいな感じよね。イタリア人はよく匂いを嗅ぐけど、そういう本能的な部分は、ある程度自由にさせておかないと、あとで自分が苦しくなるんだよ。
個人個人の感性と美しさへのこだわりが大切なんですね。
そうなの。そういう意味では日本は効率のよさとかビジネスモデルとかに非常に捉われ過ぎて、開放感がないなって思うよ。本当においしいか、本当に楽しいか、っていうところを突き詰めていない感じがして、本来の日本っぽくない感じがするんだよ。もともと日本はもっと開放的で、海の外から来るものにも温かな、面白い人たちの集まりだと思うんだよね。
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