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| Interview vol.6 |
ノンフィクション作家 島村 菜津さん (前編) |
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| 島村菜津(しまむら・なつ) |
| ノンフィクション作家。福岡県出身。東京藝術大学芸術学科卒業。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(新潮文庫)はスローフード運動の先駆けとなった。著書に『フィレンツェ連続殺人』(新潮社、共著)、『エクソシストとの対話』(小学館、21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)、『スローフードな日本!』(新潮社)他。最新作は『バール、コーヒー、イタリア人 〜グローバル化もなんのその〜』(光文社新書)。 |
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| まず、島村さんが、最近出会って印象的だったスローフードをぜひ教えていただきたいのですが。 |
| 年末に友達を誘って行ってきたのは秋田の男鹿半島なの。あそこにはハタハタ漁が残っていたんだけど、乱獲で獲れなくなっちゃったのよ。その原因を地元の杉山秀樹さんという学者さんが調べてみたら、魚が表面に上がってきて産卵をする時に一網打尽にしていたのが原因だということがわかったから、漁師たちも自分たちで3年間の禁猟に踏み切ったの。小さな沿岸漁で、ほかの漁があるからできたことなんだけれどね。そうしたら去年ぐらいから本当に魚が帰って来たのよ。私はその沿岸漁解禁のときに見に行ったというわけ。ちなみにね、ハタハタという魚の名前の由来は、「ハタタガミ」と言って、古代日本語で雷のことなんですって。 |
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| 「ハタタガミ」? |
| そう。例えば旗がハタハタいうとか、はためくとかいう言葉の語源なのね。雷がやって来ると海が鉛色に変わって荒れて、水温がドーンと下がるんだけど、そうすると150とか250メートルの深海にいた魚が、苦労して上がって来て産卵するの。それを獲っているわけよね。でも今まで全く姿も見えなかったものが、突然ハタタガミが鳴ったとたんに湧いて出てくるから、もう神の恵みそのものだったわけ。だから、ハタハタって魚へんに神と書くんだよ。 |
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| 奥が深いですね。 |
| 荒れている海に小さな3トン船とかで乗り出して行く、漁業者の数に入っているかわからないような70過ぎのおっちゃんたちが、夜も寝ないで釣っているたくましい姿に、本当に感動したよ。ハタハタもやっぱり鮮度が勝負だから、現地でそのまま塩焼きにしたら、もう飛び上がるほどおいしいわけよ(笑)。 |
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| 漁があってこそ味わえるものですね。 |
| 面白いなと思ったのは、この何年かで中国の環境汚染が進んで山が荒れてくると、メコン川の流域でも子供たちに病気が出たり、あと越前クラゲが肥大化したりしたじゃない。風が吹けば桶屋が儲かる状況という、グローバル化の負のはかり知れない側面というのが見えてきた。これから多分、もっとそういう事件が増えると思う。その中で、30年40年かけて海の時間をずーっと見ていた杉山秀樹さんという学者がいて、感覚的に海を知っている漁師さんたちが、その学者たちの言うことに納得したというのが面白いよね。 |
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| 『スローフードな日本!』でも全国の具体的な事例が紹介されていますよね。 |
| 本当は本を開いたときに、読んだ人も触れたり臭いが嗅げたりするといいんだけどね(笑)本を読んで、ちょっとムズムズしてきた人が、実際に自分が食べてみておいしいと思ったお米があったら、その農家に遊びに行ってみたり、おいしいなと思う魚があったら、その漁港の民宿かなんかに友達を誘って泊まりに行ってきたり、子供と一緒に農家民宿に泊まってみたり・・・。そうやって、おいしいものが作られている、残したい景色を自分で見つけてくれれば一番いいなと思っているのよ。逆にそれしかないの。スローフードっていう言葉を、胃袋を通じて消化する人は、自分の生活のどこかで具体的に変化が起こる。食べておいしいと感じて変わっていく。最後は理屈じゃないんだと思う。 |
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