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HIV(エイズウイルス)とともに生きる女性たちによるエッセイ集。
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エッセイ
 
「ある日のおしゃべり」 / 奈央子
少し前に、会社の定期健診で「精密検査が必要」と書かれた項目があった。がん検診のひとつだったのだけど、健診結果をお昼前に受けとったものだから、いつもは楽しいランチタイムも全くうわのそら状態。午後も仕事なんて手につかない感じだったのだけど、どうしても片付けなくてはいけないことがあったので、心ここにあらずという感じでとにかくやるべきことをこなしていた。

そんな私の精神状態とは裏腹に、隣の席の同僚はいつもどおり話しかけてくる。食べることが大好きな彼は、私が朝、話題にした料理のレシピの話に始まり、旅行先で食べたおいしい料理の話で盛り上がっている。正直、そんなことを話している場合じゃないって感じだったのだけど、気乗りしないながらも返事をしたりしているうちに、なんだかちょっと気が楽になっている自分に気付いた。その後も違う部署の女の子たちといつも通り立ち話をしていたら、不思議とそれほど追い詰められたような気持ちではなくなってきた。

仕事を終えて帰宅すると、友人から電話がかかってきた。誰にも話さないでおこうと思っていたのだけど、やっぱり心ここにあらずの返事になってしまい、健診結果のことを話すと、彼女は「祈っておくからね」と一言。私は信心深い人間では全くないのだけれど、そのことばを聞いたら妙に安心して、こんな友達がいるのならどんな結果でもがんばっていけると思えた。

後日、検診結果を持って病院にいくと、精密検査をするまでもなく、心配ないということがわかって一安心。心配して損したなあと思う反面、このことがあったおかげで、周りの人たちとの何気ないおしゃべりも、友達の一言もとても大事なんだということがよくわかって、なんだかとても温かい気持ちになれた。もちろん、できることなら、もうこんな心配はしたくないけど。
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