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HIV(エイズウイルス)とともに生きる女性たちによるエッセイ集。
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エッセイ
 
「娘とわたし」 / 奈央子
先月、家族で娘の誕生日のお祝いをした。毎年、バースデーケーキにろうそくがひとつ増えるたびに、こうやってみんなで笑いあって誕生日をお祝いできるなんて奇跡のようだとつくづく思う。こんな日が来るなんて十数年前には想像もできなかったから。

十数年前…娘を授かるという人生最大の喜びと、パートナーと私がHIV陽性であることがわかり、彼が亡くなるという人生最大の悲しみが一度にやってきた時期。娘が生まれてすぐ彼の調子が悪くなり、数ヶ月後に2人で検査を受けて陽性がわかった。そのときは子育てと、どんどん体調が悪くなっていく夫の看病で、涙を流す余裕もなかったけれど、それからしばらくして夫が亡くなり、娘と2人になると急に悲しみがどーっと押し寄せてきた。自分の感染を知らなかったので、何の予防措置*1もとらずに出産した娘がHIVに感染しているかもしれないと思って過ごした1年半*2は本当に長かった。娘が陰性だとわかった日、亡くなった夫に「娘を守ってくれてありがとう」って感謝したっけ。

これまでずっと、娘は私がいなければ生きていけないのだからしっかり生きていこうと思っていたけど、干支が一回りした今、そうじゃなかったんだと気づいた。むしろ、私は娘がいてくれたおかげでこれまでしっかり生きることができたのだと思う。

思春期の入り口で少し難しくなってきてはいるけど、まだまだ私にいろんな話をしてくれる娘。だれでも親ならそうだと思うけど、私もすっかり親バカで、娘に「かわいい」「大好き」を連発し、抱きしめたり、キスしたりして、ちょっと嫌がられている。でも、一緒にいられて幸せ〜と思うと、そうせずにはいられない。

これからも山あり谷ありだと思うけど、こうやって今一緒に生きていることが奇跡みたいなことだということがわかっているから、きっとなんとかやっていける気がする。…なんて言いつつ、現実には、毎日くだらないことで怒ったり、けんかしたりしているのだけど。娘に言わせると「ちょっと変」なお母さんの私だけど、お互い縁あって親子になったんだからがんばって一緒にやっていこうね!

*1 現在、日本では妊娠中にHIV陽性がわかると、抗HIV薬を服用し、帝王切開で出産、子どもにも一定期間、抗HIV薬を服用させるなどの母子感染予防措置が確立されており、何も予防措置をとらないときには30%と言われる母子感染率を2%ほどにまで下げることが可能になっている。

*2 娘が生まれた当時は、HIV検査は抗体検査(ウイルスに対してできた抗体を見つける検査)のみが可能だったため、母親からの移行抗体が消える1年半まで、子どもがHIVに感染しているのか、ただ抗体を母親からもらっているのかがわからなかった。現在、日本ではウイルス量を測定する検査があり、血液中にHIVがあるかどうかをすぐに調べることができるため、1年半待つ必要はない。
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