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HIV(エイズウイルス)とともに生きる女性たちによるエッセイ集。
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エッセイ
 
私の「仕事」 / 奈央子
「奈央子がしたいことなんでしょ。ブツブツ言ってないでやることをやる!」

今年1月にバンコクであったHIV治療リテラシーとアドボカシーに関わる国際的な組織の会議に出席し、すべきことがたくさんあるのに自分は何もできないのではないかという無力感にさいなまれていたときに、ある友人が言ってくれたことばである。

私はHIV陽性だとわかってから数年後に、HIV陽性者として医療従事者の研修などで話すという機会をいただいたのをきっかけに、いわゆる職業としての仕事とは別にHIV陽性者として「仕事」をしている。本名の私と、HIV陽性者としての私と、言ってみれば二人の私がいる。2年ほど前からは、日本とアジア太平洋地域のHIV陽性者ネットワークに関わっているのだけど、私がここにいていいのか、つまり、民間企業に勤めている私がHIV/AIDSの活動に全力を傾けていると言えるのか、日本人である私が当事者としてアジア太平洋のHIV陽性者の活動に関わっていていいのか、をずっと考え続けていた。でも、この友達の一言で、自分がそもそもどうしてこういうことに関わっているのかを原点に戻って考えることができた。

私がHIV陽性だとわかってから数年後、HIVの治療という点で、目覚ましい進歩があった。10数年前に夫が亡くなった時には、開発されていた抗HIV薬は少数で、ほとんどの国ではそれらは手に入らなかった。夫は治療を受けることなく亡くなり、私はその後の薬の進歩の恩恵を受けることができたために今まで元気に生きている。けれど、多くの薬が開発された現在でも、まだ治療を受けられない友人たちがいる。ワークショップやミーティングに参加して知り合い、会えてよかったと思う友達である。彼ら彼女らとこれからも話をしたり、笑いあったりしたいと思う。だから、例えば、薬へのアクセスを求める活動をすることは、私にとってすごく身近なことで、どうしてもやりたいことなのである。自分がどんな立場かとか、どこの国の人間であるとか、そんなこと関係ないし、それを自分が何かできないことの言い訳にしていてはいけないと思った。

同時に、こういうことをやっている私をサポートしてくれる家族や友人たちはありがたいなあと思う。自分だけでは絶対にできないことだから。会社にはHIV陽性だとは伝えていないものの、HIV/AIDSの会議に出るからと言って頻繁に休みを取る私。変な奴だなあと思いつつもそれを許してくれる上司や、協力してくれる同僚にも感謝しなくちゃ。
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