HIV(エイズウイルス)とともに生きる女性たちによるエッセイ集。
「きずな、愛、結婚、セックス 」 / マリア
昔あるところに少女がいた。少女は活気に溢れ、おてんばで、あらゆる人を愛したいという切ない思いに身を焦がしていた。人気者で気立てもよく、チャーミングで美しかった。ある日、ウイルスが彼女の人生に姿を現した。それでもすべてが変わってしまったわけではなく、彼女は相変わらず美しく、活気に溢れ、おてんばなままだった。ある日彼女は、ひとりの少年に出会った。理想の人。それから彼女は少しずつ無口になっていった。彼女は、こうした日々が永遠に続くと信じていた。しかし彼はHIV陽性ではなく、彼の家族は彼女を拒絶した。汚名。差別。さまざまな問題がふたりのきずなを弱めていった。数年が過ぎ去り、彼の愛は冷めてしまった。彼女は捨てられた。それでも彼女は彼を愛している。いつまでも。
なにもかもが変わってしまい、彼女は落ち込んだ。2ヵ月の間、じっと部屋に引きこもった。そして少しずつ、生きる気力を取り戻していった。しかし彼女はもはや美しくなかった。チャーミングでもない。いきいきした面影も失せてしまった。彼女は悲しみに暮れた。裏切られた。落胆した。その眼差しは冷たく、遠くを見つめている。
何年もの間、彼女は自分の世界に閉じこもり他人に対し頑なに心を閉ざした。孤独になった。悲しかった。不幸だった。孤独。気が遠くなるほどの孤独。
ある日、彼女はすべてを変えようと決心した。他人を受け入れよう。しかし、どうしたらよいのかわからない。他人との接し方がわからない。友達の作り方がわからない。どうやって話し、自分を表現すればよいのかわからない。彼女は何度も外の世界から疎外されてきた。自らも自分を拒絶していた。
彼女はキスをしたい、愛に触れたい、そして他人の肌に触れたい。彼女はもはや美しくない。若くもない。そしてウイルスに感染している。
そのうえ彼女は恐れている。
セックスへの恐れ。気をつけていても、もののはずみでいろいろなことが起こることを彼女は知っている。他人を汚すことへの恐れ。
愛への恐れ。彼女は愛には痛みがともなうものであることを知っている。
しかし欲望が彼女の肌を焦がす。彼女は愛が欲しい。友達が欲しい。仲間が欲しい。魂を分かちあいたい。肌を分かちあいたい。
そして遅かれ早かれ、きっとその日がくると彼女は信じている。
彼女の手を取り、抱きしめ、一緒に人生のダンスを踊ってくれる人が現れるだろう。扉は開かれている。
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