HIV(エイズウイルス)とともに生きる女性たちによるエッセイ集。
「試練に立ち向かう」 / マリコン
「どんな問題にも負けないようにしよう。問題に負けてしまったら私の問題は本当の苦難になる」。これが私の人生のモットーです。
私は上から2番目の子供として生まれました。とても愉快で情に厚い姉妹であり、娘でもあります。私は5人の姉妹とともに貧しい家で育ちました。父は政府機関の職員でしたが、母は果物を売って家計を支えていました。母がこんな言葉を口にしていたことをよく思い出します。「お母さんは子供のころもっと勉強したかったけれど、両親に学費を出す余裕がなくてあきらめたの。だからあなたはその分一生懸命勉強しなさい」。私が16歳になるまで、母は繰り返しそう話していました。
大学生になったとき、両親は学費を払えなくなり、私は働きながら勉強を続けるしかありませんでした。姉と私は市場でバナナを売り始めましたが、歩道で売っていたので取り締まりに遭うこともあり、警官に追いかけられたことは忘れられません。今でも自分が警官より足が速かったことを思い出すたびに笑いがこみあげます。学業を続けるためにはそうするしかなかったのです。大学を卒業することが、まともな生活を手に入れるための唯一の道だということを、私は知っていました。
私が19歳の年に母が亡くなりました。そのときは、自分の人生がひっくり返ったような気持ちになりました。どうしていいかわかりませんでしたが、いつものようにこれは一つの問題にすぎないと自分に言い聞かせました。くよくよ考えていても仕方がない、それよりも姉妹を支えていくためにできる限りのことをしようと心に決めました。姉妹と自分自身の生活費のために一生懸命働き、夜学で勉強しました。
大学を卒業してからは、政府機関の事務職員として働き始めました。自分が順調な人生を歩んでいるように思えました。その頃私にはボーイフレンドがいましたが、親密な関係の人はいませんでした。
21歳のとき、教会の聖歌隊に入りました。たくさんの友人ができ、夫にもそこで出会ったのです。彼とは初めの5年間はただの友達でしたが、その後の2年間を恋人同士として過ごしました。交際を始めて2年が経ち、私たちは内密に結婚することにしました。生涯のパートナーを得てとても幸せな気持ちでした。
数ヵ月後、夫は叔父から献血をするよう頼まれました。それは敬虔なクリスチャンとして当然の義務でした。彼がHIV陽性であることを私たちが知ったのはその時です。最初はショックを受け、恐怖に怯えましたが、彼には「ただのウイルスなのだから」と言いました。それから私自身も検査を受けましたが、結果は陰性でした。私は夫に再検査を受けることを勧めました。そして彼に付き添って病院に行き、自分ももう一度検査を受けたいと医師に頼みました。
検査結果を聞くために、私たちは再び病院に足を運びました。私は初めのうちは緊張したりせず、冷静な気持ちでいました。夫も見たところ落ち着いた様子でした。そしてついに検査結果を知らされる瞬間がきました。封がされていない封筒を開け、そこで目にしたものは、自分の人生で最大の試練でした。私たち夫婦は二人とも陽性だったのです。
私の手は震えていました。身体を動かすことができませんでした。歩きたいのに足が動いてくれないのです。泣きたいのに泣くことすらできませんでした。叫ぶことも、話すことさえもできませんでした。これが夢であってほしい、目が覚めれば消えてしまう夢であればよいのにと思いました。立っていた場所にそのまま沈み落ちていくような気がして、私は泣き出しました。「私の人生はどうなるの?」と自分に問いかけ、「なぜ私が?」と神様に訴えました。それでも、これ以上泣いてばかりもいられないと悟ってから、私は自分の身に起こったことを5人の姉妹に話しました。彼女たちはそんな私を受け入れてくれ、私を愛しているし、何が起ころうと私の味方だと言ってくれました。そして決してあきらめてはいけない、あきらめることは何の解決にもつながらない、と励ましてくれました。私は親友たちにもこの出来事を打ち明けました。親友たちも私を受け入れてくれ、そんなことで今までの友情が変わるものではない、と言ってくれたことに驚きました。
それから私は、同じようにHIV陽性とわかった人々に助けを求めました。みんなは私に生きる勇気を与えてくれ、HIVに感染しているのはなにも私ひとりではなく、自分なりのやり方でだれかの力になれるのだと教えてくれました。こうして、私は敬意と信頼をもって自分と接してくれる数多くのHIV陽性の人々と知り合いました。私は新しい家族を見つけ、神様がこの試練を与えてくれたことを感謝するようになりました。
今なら私は世界中の人々に向かって、自分がHIVとともに生きる女性であることを恐れていないとためらいなく言うことができます。私にはその権利があることを知っているからです。そして、これからの人生で、新たなパートナーに出会えることを確信しています。
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