HIV感染症(エイズ)の分野で先進的な研究を続けられている、イリノイ大学歯学部のジョエル・B・エプスタイン教授にうかがいました。
エイズと口腔ケア
近年、エイズ治療が発達しているそうですね。
HIVの増殖を抑えて、宿主の免疫機能を向上させる「多剤併用療法(HAART)」は非常に効果的です。この治療法の開発によって、1980年代には致命的な急性の病気だったエイズは、症状が少なく安定した慢性疾患へと変わりました。
口腔症状も改善されていますか?
そうですね。ただ、ウイルス性のいぼは、他の症状が抑えられるようになって来た中で、増加が目につきます。原因の一つは、免疫システムが修正され、いぼの中でのウイルスの増殖が非常に遅いことだと思われます。また、HIV流行初期に主に見られたカポジ肉腫が、最近また見られるようになって来ました。リンパ腫も多剤併用療法を受けている患者さんに増えていますね。
逆に、口腔症状を治療することで身体の健康状態が改善されることもあるのですか?
歯周病と全身の健康の関係は研究が進んでいますが、歯周病とHIVに関してはまだ今後の研究が必要だと思います。HIVの感染率が高い地域でも、明確な因果関係を示すにはデータが不十分です。ただ、これまでの研究成果から考えれば、歯周病とHIVにも関係があるでしょう。口腔内のカンジダや細菌感染は宿主に負担をかけますし、がんのリスクにもなります。
具体的な事例はありますか?
ヘルペスウイルス感染に対して抗ウイルス剤を使った面白い研究があります。ヘルペス・ウイルスは唾液腺や顔面の神経の中から口腔内に分泌され、時に口腔内の痛みや唾液腺の感染を引き起こすのですが、このヘルペスをうまくコントロールすることができると、HIV関連の病状も進みにくくなるというのです。つまり、二つのウイルスが合わさることで、ウイルスの増殖が刺激され、時に促進されるため、ひとつ(ヘルペス)を抑えることで、もう一方(HIV)の進行速度を遅らせる可能性があるということです。
写真:第20回日本エイズ学会学術集会での講演の様子
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